ルーマニアの首都・ブカレスト郊外。トト(10歳)とふたりの姉たちが住む小さなワンルームの部屋。ソファベッドが一つと少しの棚があるだけ。水道もコンロもない。
3人の家には、夜になると男たちが集まってくる。男たちはみんな注射器を取り出して、慣れた手つきでそれぞれ腕や手に針を刺す。
アナ(17歳)は「ヤク中は出入り禁止」だと言って彼らを追い払おうとするけれど意味はない。ドラッグを打つ男たちの隙間に潜り込むようにして、姉弟は眠る。
トトたちの母・ペトラはタルグショル刑務所にいる。麻薬取引の罪で禁固7年。父親のことは、顔も知らない。
アンドレア(14歳)はいつもイライラしていてアナとすぐ言い合いになり、友達の家を泊まり歩いていて家には居つかない。映画のために監督から預かったビデオカメラで、自分の生活を記録している。友達と一緒に音楽を聞いたり、ヘアスタイルで遊んだり。ふつうの女の子と同じようにしていたい。
アンドレアが友達の家に泊まっているあいだ、ブカレスト麻薬捜査部隊が家に突入してきて、アナは逮捕されてしまった。
トトとアンドレアが参加している児童クラブでのダンスの課外授業。ダンスチームがステージの上でデモンストレーションを披露する。目を輝かせて見入るトトの手は、次第に音楽に合わせてひらひらと波打ちはじめる。トトは見よう見まねで全身で踊る。
出所し、ドラッグは辞めると誓ったアナだったが、思い通りにいかない生活から逃げるように、またドラッグに手を出してしまう。
アンドレアは、ひとりの部屋でカメラに向かって心の内をはきだす。「文句を言うな、甘えるな」と言われることもあるけれど、悩みを誰かに聞いてもらうとそれだけで少し楽になれること、むかしアナと施設にいたとき、親に捨てられたと傷ついたこと。アンドレアはトトをつれて孤児院に入ることを決めた。
トトはすっかりダンスに夢中。通りを歩いていても、レッスン中でも、体はひとりでに動き出す。そして、トトが目指していた国際ヒップホップ大会の当日がやってきた ―
10歳。3姉弟の末っ子。児童クラブの課外授業で出会ったヒップホップダンスに夢中。過酷な環境の生活で朝寝坊もしばしば。それでも無邪気にふるまうトトだったが、ふたりの姉、そして刑務所の中の母との関係に次第に変化が。
14歳。3姉弟のまんなか。気の強い性格で、アナと衝突することもしばしば。幼いトトをないがしろにしがちだが、映画のためにとナナウ監督から手渡されたビデオカメラには、誰にも言えない心の内とその葛藤が映される。
17歳。いちばん上のお姉ちゃん。両親不在のなか、自分がしっかりしなければいけないと気負いが見える。夜な夜な家に集う男たちを追い払えず、自らもドラッグに手を出してしまう。その後出所し、再出発を誓うのだが…